アクアプールのショールームと自宅を兼ねたコンテナハウスに住まうオーナーのもとに、長年の相棒である「セブン」が還ってきました。
40年来にわたり所有しているこのLOTUS SUPER SEVEN Series3は、キャブレーターや点火系統など広範に手を入れ、車体回りもアルミ板からボディを叩き出す名人の手によって甦ったんです。
こいつはロータスの1600CCツインカムビッグバルブエンジンにエスコート4速ミッション、ショートコックピットにリジッドのリアアクスル、さらにジムクラーク追悼の意味を持つブラックバッジというなかなかレアな個体です。
また製造元がロータスからケータハムに移行する時期のモデルであり、そもそもがキットカーだったようでしてパーツ探しにはとても苦労します。
事程左様に一筋縄ではいかないクルマなんですが。
軽い車体に強力なエンジン。両手がフロントタイヤに、右足がリアタイヤに直結しているかのような超クイックレスポンス。デロルトキャブの吸気音と共にサイドマフラーの咆哮が奏でる魅惑のサウンド。これらが織り成すドライブはまさに痛快そのものです。
狭いコックピットに潜り込み、サベルトの4点式ハーネスで体を固定します。いや、その前にパーキングブレーキを解除しないといけません。助手席側の奥まった場所にあるので手が届かなくなるんです。幅広の靴だとブレーキとアクセルペダルを同時に踏んでしまいかねませんので、履く靴も選びます。
イグニッションスイッチをオンにして燃料ポンプの作動音を確認し、アクセルペダルを数回煽って加速ポンプを作動させてからセルモーターを回します。
クランキングの瞬間に初爆を拾う感覚で繊細にアクセルペダルを操作してやるとエンジンが目覚めてくれます。
重めのクラッチペダルを踏みこみ、ショートストロークのシフトノブを1速に入れ、半クラッチが短いクラッチを丁寧にリリースします。トルクのあるエンジンと軽い車体も相俟って、発進してしまえばとても運転しやすいクルマです。
路面の状況を忠実に伝えてくるサスペンションの動きと前後左右のGを全身で感じてクルマの姿勢を制御する。ドライバーの操作とクルマの動作のあいだに余分なものが介在しない、プリミティブな構造のこのクルマならではの対話を楽しみます。
入力に対する出力反応を鋭敏に感じ取り、自らの五感をフルに駆使して感応すれば、こいつは何物にも代えがたい走りの快感を与えてくれるんです。
これから色々と手を入れていきます。
まずはキャブレーターのセッティングに手を付けます。
宮古島の気候や乗り方に合わせてジェッティングします。”セットを変えて走行” を数度繰り返しますが、これはやりだすと深~い沼にハマってしまいがちなので、そこそこにイイ感じになったところで止めときます。
割れていたバックライトのガラスレンズを交換したものの点灯しない事に気付き、さらにブレーキライトとナンバー灯も点灯しないので電気系統を調べていきますが、こいつがやっかいでした。
各スイッチ類や電球には異常がないので配線をチェックしますが、過去に幾度も修理しているのでコードの行方が分からない。テスターや検電器を使ってあーでもないこーでもないを繰り返し、ダメになっていた配線や端子を作り直して何とか治りました。
ステアリングに若干のガタがあるので、シャフトのユニバーサルジョイントを交換。またセンターミラーを交換して後方の視界を改善しました。サイドミラーはリアフェンダーと空しか写しません。
車体側のステーが折れてマフラーが落ちましたが、懇意にしている修理工場の整備士が適当な金物でステーを作成してくれました。部品が無くても現状で何とかしてくれる、昔気質の修理屋さんです。いつもありがとう島尻さん。
ブレーキが抜けました。ブレーキペダルを踏んでもスカスカです。
これは大事とブレーキオイルタンクを覗いてみれば、なんとスッカラカンになってます。頭の中が???でいっぱいになりながらも、とりあえずブレーキオイルを補充してエア抜きをやってみます。
すると運転席でペダルをダブっていたオーナーが素っ頓狂な声をあげました。
「オイルが噴いてるよ!」・・・。
見れば、ペダルを踏むたびに油圧ブレーキスイッチから噴水の如くオイルが噴きあがっているではありませんか。
マスターシリンダーからの油圧を分配するパーツにブレーキスイッチが付いているんですが、油圧が掛かるとこの筐体と絶縁体の接合部分からオイルが漏れちゃうんですね。
シールテープを巻いてみても漏れは収まらず、このままではマズいので純正部品を当たってみますが、これが結構なお値段ですし時間もかかる。ならばと言う事で代替品を探すことにしました。ところが今時油圧式のブレーキスイッチを使っているクルマなんてほぼ無く、機械式に改造する手もあるようですが、結構面倒そうなんで途方にくれました。
困ったときの神頼みという事で、長年このセブンの面倒をみてくれている板金名人に相談してみます。曰く、バイクの油圧スイッチが使えるとの御箴言。
探してみるとありました。ハーレーのパーツが使えそうです。安価ではあるものの装着できるか若干不安でしたが、ダメもとで注文してみます。
パーツが届き交換してみると・・・、これがバッチリです。漏れも止まり、またブレーキのタッチもとても良くなりました。
今までは油圧が逃げていたんで効きが良くなるのは当たり前の事なんですが。まずはメデタシ。
スピードメーターが動かなくなりました。
これまでにもメーター側のケーブルが外れるって事があったので見てみるが外れていない。インナーワイヤーも確認したけど切れていない。
ってことはトランスミッション側での問題発生か?
ジャッキアップして下から覗いてみると、奥まった場所に接続部があるのが見えましたが、到底手が入りそうもない。
ならばという事でシフトトンネルのカバーを外してみるとアングルドライブというパーツが外れているのを発見しましたが、ここも手が入らない。
これはギヤボックスとボディ間の狭い隙間の中でケーブルの向きを90度変える役割をしているんですが、いかにせよ狭すぎてどーにもなりません。
オーナーに事情を説明したところ、最悪の場合シフトトンネルに穴を開けても構わないとの力強い言葉を頂いたので、さっそく件の修理工場へ駆け込みました。
島尻さんと一緒にあれやこれやと試しましたがどうにも埒が明かず、結局「力業で行くしかない」との結論に至りました。シフトトンネルのアルミ板を私が引っ張って隙間を作り、そこに島尻さんが手を突っ込んで接続部分を嵌めるという事です。ただ簡単には行かず、「もっと引っ張れー!そのままー!」、「もう無理ー!」などと何度もトライし、二人とも汗だくになってようやく完了しました。
今回は外れただけで済みましたがこのアングルドライブ、もし壊れたら途方もなく高価なのです。
ま、結果的にアルミ板に穴を開けずに、リベット1本の損害にとどまった事は不幸中の幸いでありました。メデタシ。
クイックリリース ステアリングボス取り付け
乗降性の向上と幾ばくかの盗難防止効果を期待してハンドルを簡単に外せるようにしました。
乗り降りについては両腕で体を支えるようにして下半身を滑り込ませる必要があり、なかなか大変なんですね。まずはパーツ探しから始めますが、これが難航しました。
こいつのステアリングシャフトは一体式なんですが、巷にあるのは上下分割式用のモノなので全てのシャフトを交換しなくてはなりません。さらにボスとステアリングも含めるとかなりの金額になってしまいます。さてどうするか?
様々な方面から情報を集めているうちに、以前、コイツ専用のボスが販売されていたという事を知りました。しかし既に売り切れで再販予定もないらしい。こりゃシャフト全体を交換するしかないかと思いながらも四方八方手を尽くして調べを進めていると、捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもので、ついに僥倖に恵まれることになりました。
なんと在庫を持っているショップを見つけたのです。しかもラスト2個とのこと。早速注文し、届いたパーツを組んでみると・・・バッチリです。多少の加工は必要でしたけど。日本製なので精度も良く、動きもしっかりしていて安心感があります。走行中にハンドルが外れたら大変なことになりますもんね。
ステアリングもモトリタの280mm・フラットコーンのタイプに交換して、懸念していたボスの厚みとシャフトの角度変化に対しても違和感なく仕上がりました。
ハンドル操作はチョー重くなりましたけど。
宮古島で車検取得
内地で車検を取って持ち込んだセブンを色々と手を加えながら楽しんできたんですが、こちらでの車検も近づいて来ました。
破れていたステアリングラックブーツとタイロッドエンドブーツを交換し、必要な整備を済ませたうえで陸運局に持ち込みます。
・・・あっさり落ちました。原因は諸々ありますが、そもそも検査員もこんなクルマは見たこともないようで、どう取り扱って良いか戸惑っているようです。製造年の証明ができれば問題のいくつかはクリアできそうなんで、八方手を尽くして調べましたがどうにもならず。で、とりあえず指摘された箇所を直して再び持ち込みますがやっぱりダメ。とは言えこちらも簡単には引き下がれないんで粘ります。
ラインを通すのに協力してくれた修理工場の兄ちゃんと他の検査員も交え侃々諤々の協議の末、妥協案を引っ張り出すことに成功しました。
まずヘッドレストの装着。これは島尻さんが廃車から取り外してくれたヤツを取り付けます。次はむき出しのエアファンネルに何らかのカバーを付ける必要があるんですが、ファンネルソックスという市販のパーツを探し出して装着。そして最大の難関であるフロントフェンダーからのタイヤはみ出し対策です。
もともとオリジナルよりかなり太いホイールを履いていて、はみ出ているのは承知の上だったんですが、これまでは民間車検で何となく通ってきたんですね。
しかしながら、今回は陸運局持ち込みという正面突破の作戦ですので正攻法で何とかしなきゃなりません。
コイツは美しい曲線を持つクラムシェルフェンダー仕様でして、そのフェンダーとボディとの間にかませモノをしてフェンダー幅を広げてみるというアイデアもありましたが、ヘッドライトのステーが邪魔をして叶わず。いっその事サイクルフェンダーにとも考えましたが、やはりオリジナルの姿を残したい。
やはりホイールを何とかするしかありません。軽自動車用のマルチホールを試してみたり、いろいろとやってみましたが・・・行き詰まりました。
PCDが特殊なのとオフセットの兼ね合いもあるので適合するホイールがなかなか見つからないんです。それでも各方面の手助けを得ながら根気よく探していると・・・「もしや??」。はい、ヤフオクでプジョーの純正ホイールを見つけました。
PCDは合うものの、オフセットについては現行ホイールの数値を手測りで計測したんですが、やはり現物合わせしてみないと分かりません。安価でもあるし他に手がないので、オーナーとも相談をしてポチります。5.5Jのホイールにできるだけ細いタイヤを履かせ車体に装着・・・「ん~、微妙」。曲線で構成されたフェンダーは角度によって若干はみ出しているようにも見えるんです。まあ許容範囲の規定もありますし、何とかなるだろうとの判断を下し、いざ鎌倉。
合格しました!!こんなに嬉しい車検は人生で初めてです。
ま、すんなり通った訳ではなくマイナーな問題はありました。なにせ前例が無いものですから、向こうさんも多少の融通というか解釈の違い的な感じでオッケーを出してくれたんです。
いずれにしても排ガスや安全基準は満たしているので、大手を振って乗れるようになりました。さあウィンドシールドに車検ステッカーを貼って・・・いや、これは「そうでは無い」という解釈ですからナンバー用のステッカーに変えてもらい、意気揚々と走り出しました。
ここまで読んでくれた方はお気づきかと思いますが、セブンはお色直しをしたんです。
もう1台の相棒であるジムニーシェラと同じ純正パールホワイトに塗装しました。このカラーは光の反射がとても綺麗ですし、より大人っぽく上品に仕上がったと思います。
これからも手を入れるところはあるので、随時書き加えていきたいと思います。
ハブベアリングとサスペンションブッシュ交換
以前より異音が出ていたサスペンション廻りのブッシュを交換することになりました。
まずは消耗品とも言えるリアのAアームのゴムブッシュ。
こいつは見た目からしてダメでしたし、ラジアスアームのメタルブッシュも一部ガタが来ていたので全部交換です。
左前のハブベアリングも交換が必要との事なんで、ついでにフロントのブッシュ類も交換します。
まずはアーム類を外して行きます。一見シンプルで整備性が良さそうに見えますが、コイツがなかなかの曲者です。
露出している側はイイんですが、フレーム側のボルトを外そうにも工具が入らない。上から覗いたり下から潜ってみたり、しまいにはボディをこじってみたり。さらにコイツのボルト類はインチとメトリックが混在しているので足りない工具を買いに行ったりして、何とか分解することが出来ました。
外した部品を平良自動車に持ち込んで、ハブベアリングの交換とブッシュの打ち替えをやってもらいます。
ついでにアーム類の塗装もやってもらう事になりました。
仕上がったパーツを組み込んで、早速試乗します。
イイ、すごくイイ。
クルマ全体がシャキッとした感じで、乗り味がとても良くなりました。まあ、リア廻りなんかはガタが来ていたんで当たり前なんですが。
SPAXのショックアブソーバーも少しダンピングを調整しながら乗ってみましたが、体感できるほどの変化は見られず。なにせ古いですからね。こちらとエンジンマウントを新しくすれば更に良くなると思います。
走りに特化したシンプル極まりないこのセブンちゃんですが、バラしてみるととても興味深い発見がありました。
リアアクスルはリジッドとなっていて、前後方向は左右のラジアスアームで、左右方向へはAアームで位置決めを行っているみたいです。
Aアームの2点はメタルブッシュによってフレームに緊結されているんですが、その頂点はゴムブッシュを介してホーシングに接続されているだけです。見た目からして剛性不足を感じますが、軽量化との兼ね合いを考えた結果でしょうね。
後年のモデルではリアアクスルが半独立式や完全な独立式になり、アーム類も改良されています。
フロント廻りについても面白い作りになってます。
一見するとダブルウィッシュボーンに見えますが、アッパーアームはただのIアームでそこにスタビライザーが連結されているだけです。
シンプルにも程があるだろって作りですが、軽量化にこだわったコーリン・チャップマンの執念さえ感じるところですね。こちらも後年のモデルではアーム類も改良されています。
このセブンはロータスからケータハムへ製造が移行する過渡期のモデルだと思われます。
元来OHVのケントエンジンを積んでいて、パワーの低い頃ならこのシャーシで充分だったのでしょうが、ロータス製のビッグバルブツインカムにデロルトのキャブを奢ったコイツには明らかにシャーシが役不足だと思います。
後年のモデルではパワーアップするエンジンに対応すべく足回りも改良されていますので、運動性能や安全性も向上しているようです。
少々危なっかしいクルマであるとも言えますが、その生い立ちや希少性も相まって愛しいセブンちゃんなんです。
セルモーター交換
セルモーターの調子が良くないので、外してみるとなんとピニオンギヤが欠けてます。
よくぞこれまで動いていたモンだと思えるほどの損傷です。早速パーツを探しますが、適合パーツが見つかるまでは騙し騙し乗ることにしました。
例によってこれが難航します。いろいろ当たってみたところ、どうもロータスエランのモノが使えそうですが、ここでも一筋縄には行きません。
モーターの取り付けは大丈夫そうなものの、ピニオンギヤの歯数が違うんです。
さらに探して行くと、歯数の合うピニオンギヤが単体で発売されていたんです。うまいこと組み合わせができるか少々不安だったんですが、オーナーとも相談のうえ発注しました。
パーツ待ちのあいだ、なぜかセルモーターは調子良くて、オーナーとも「こりゃ最後の一花かもね」なんて話をしていたところ、まさにその通りになったんです。
ある日始動しようとしたところ、もうウンともスンとも言わず万事休すです。分解してみると、モーターは焼け絶縁体もすり減って、壮絶な姿に成り果てていました。
「よくぞここまで頑張った」。端無くも出先では最後の力を振り絞ってくれ、ガレージに帰ってから最後を迎えたセルモーター。
セブンちゃんはやっぱり良い子なんです。
新しいセルモーターは問題なく作動しました。普通に戻っただけの事がこんなにも嬉しいのがセブンライフなんです。
シフトノブ交換
シフトアップすると手がインパネに当たる事があるんで何とかしたいと考えていました。
シフトノブの高さを出せば若干手前に来るのでシャフトを延長すれば、とも思いましたがそうするとストロークが長くなるんですね。
で、探していたところティアドロップ型のシフトノブを見つけました。
ウッドで見た目も恰好良いし、高さもちょうどいいかもと適合パーツを探してみると、これがまた一筋縄ではいかない。
シャフトの直径が10mmでネジピッチが1.5のモノはロータス用として一般的に出回っているんですが、コイツは違うんですね。
シャフトは5/16インチなのは確認出来ましたが、どうもピッチが並目と細目の二種類あるらしい。ホームセンターであれやこれやとネジを見比べて、もう細目!と見極めをつけて発注しました。
取り付けてみるとこれがバッチリです。シフトストロークもあまり変わらず、インパネに手が当たることもありません。
横からも握れるようになったので操作性も向上しました。まあ、そもそもインパネに手が当たるってのもどうなの?とも思いますが。
黄色と緑のロータスマークもアクセントになってイイ感じです。
ステアリング交換の時にも思いましたが、直接手が触れる部分が良くなるとドライブの楽しさも倍増するもんですね。
こんな何気ない事にも喜びを感じさせてくれるのがセブンライフなんです。